逆針
敏感な心は少しでも撫でようものなら赤く腫れ上がり、ビクビクと痙攣する。そんな心に向かって多方面から複数の細長い針がスーッと入っていく。あまりの無音さに痛みを感じず、深く刺さっていくことにも気付かない。細長かった針は心の蛋白を吸い上げみるみる太くなり、傷穴を広げていく。抜くことを知らず、放置された心は刻一刻と腐敗が進み、孤独に息絶えるのだ。
突然鼻から抜ける線香のような懐かしい香り。スモーキーで甘い。
針を抜く、針を抜く、
痛みが全身に伝わりビクビクと痙攣する。抜いた後の穴は針状のケロイドになった。それは次第に内側の粘膜を削り、やがて皮膚を突き破った。
針は自己を傷つけ、時に他人を傷つける。
「逆針」